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日本の一般住宅において、9割を超える部屋の壁が「白一色」と言われています。
多くの人がインテリアに関心を持つようになった現代でも、インテリアに合わせて「壁」を変える=「壁紙を貼り替える」という認識が一般的になったとは言えません。壁紙の世界を知らずに壁紙を選ぶと「無難だから」「飽きがこないから」という理由で白やベージュを選択する人がほとんどです。
でも、インテリアには幅広いジャンルがあります。例えば、憧れの海外インテリアを実現するには、白やベージュの壁だけで成立するのでしょうか。

今、「自分で壁紙が貼れる」ことを知った人、壁紙を変えると部屋が変わることを知った人、憧れのインテリアに近付くことができた人、そんな人たちが徐々に、しかし確実に増えつつあります。
世界には信じられないくらいたくさんの種類の壁紙があふれています。そして、いくつかの道具さえあれば、壁は自分の手で変えることができるのです。

不慣れな手は小さなズレやほころびを生じさせるかもしれません。でもそんな空間は、完璧に仕上げられた空間よりも数十倍も愛おしいものとなります。そして「暮らし」そのものに愛着を持つようになります。

おそらく、日本初の壁紙専門情報誌となる『WALLPAPER WORLD』。
ほとんどすべての事象がオンライン上で完結する今、「壁紙」と検索すると、瞬時に膨大な数の情報にアクセスできます。しかし、そんな時代において「紙」という媒体に立ち返る必要性を感じました。
ある時、ある場所で、ふと手に取る。そんな「壁紙と人との出会い」を描きたくなったのです。

2020年。新型コロナウイルスが世界中を震撼させ、これまで信じて疑わなかった「当たり前」が一瞬でもろく崩れ去りました。「STAY HOME」が怒号のように響くなか、かつて経験したことのない時間を屋内で過ごし、「暮らし」を見つめる機会を得ました。そして、もっと「家」を楽しもう、という新たな価値観が多くの人の心に芽生えました。

まずは、空間の彩りを変えられるということを知ってほしい。そして、自ら選び、彩られた空間が、どんなに素晴らしいかを知ってほしい。
壁が変わると、言葉の通り、世界が一変します。
この事実を一人でも多くの人に伝えたいというのが、本書の目的です。

2020年8月 創刊

※こちらのサイトでは、書籍「WALLPAPER WORLD」に掲載した記事の一部をお読みいただくことができます。