THE BRITISH WALLPAPER BRANDS -イギリスの壁紙ブランド

「イギリス」といえば何を思い浮かべますか?
ファッション、音楽、王室、曇り空、フィッシュアンドチップスなど、訪れたことがなくてもこの国にまつわるキーワードをいくつかは思い浮かべられるはず。島国であることやマナーを重んじる文化から日本との共通点が取り上げられることもありますが、実は民族や文化的に多様性にあふれ、差別を嫌い、個性を尊重する土壌を持っています。

産業や芸術文化の面でこれまで世界に大きな影響を与えてきたイギリスは「壁紙大国」でもあります。大国と称するにふさわしい理由の一つは、現存する「最古の壁紙」がイギリスで発見されたこと。壁面装飾の歴史を語るうえで欠かせないこの壁紙は、1911年にケンブリッジ大学クライストカレッジの学長公舎を改装した際、2階寝室の天井から発見されました。黒インクで木版刷りされたざくろのモチーフが断片的に残っていたことから「ケンブリッジ・フラグメント」と呼ばれています。「フラグメント」は英語で、断片や破片を意味します。

1509年とされる制作時期を特定した有力な根拠は、同年に出されたヘンリー8世の布告文書の裏面に印刷されていたこと、また発見の場となった学長公舎も同年に完成した建物だということです。当時紙は貴重品であったため、余った布告文書を他の用途に再利用したと考えられています。 壁紙にとって重要な製紙技術と印刷技術が発展したのは、18世紀半ばから19世紀初頭の産業革命期。長尺の紙を作る技術や機械印刷の発展が壁紙の生産性を飛躍的に上げ、これ以降の壁面装飾の主流となっていきました。

こういった歴史的な背景もあるのでしょうか。現在壁紙を制作するブランドは世界中に存在しますが、勢いがあるのは発展の舞台となったヨーロッパ。その中でも特に、イギリスを拠点とする壁紙ブランドの数は突出しています。他国で立ち上げられたブランドが「イギリスのブランド」という称号を得るため、国境を越えて活動拠点を移すこともあるほど、壁紙業界においてステータスのある国となっています。
今回はそんなイギリスから25の壁紙ブランドを特集します。歴史ある老舗のブランドから新進気鋭のデザイナーが立ち上げたブランドまで非常にユニークなラインアップ。

まずは、イギリスで暮らす2人の女性デザイナーとそれぞれが立ち上げたブランドにスポットを当てます。デザイナーという道を選んだきっかけやデザインのルーツ、彼女たちの視線が捉えるささやかな日常の一コマ。生きるうえで大切にしていることは何か、そしてどんな未来を描いているのか。 インテリアが好きな人だけではなく、デザインやアート、もの作りに携わる人にとってもきっと刺激的な、そして新鮮でリアルな「言葉」をお届けします。

ラブリーでレトロ、キュートなデザイン

No.1


Dupenny|デュペニー

イラストをベースとしたラブリーなデザインで人々を魅了するイギリスのブランド《Dupenny》。一度見たら目に焼き付いて離れないそのデザインは、150年以上の歴史があるロンドンのケンジントンにある国立博物館にコレクションの一つとして所蔵されるほか、名だたるアーティストやデザイナーらの作品とともに美術館に展示されるなど、芸術の分野においても高く評価されています。
立ち上げたのは、元歌手でアーティストのエミリー・デュペン。彼女が得意とする女性のイラストには、1920年〜1950年代のファッションやメイク、ヘアスタイルなどのビンテージな世界観が色濃く表現されています。エミリー自身もイラストに登場するようなラブリーでキュートな女性。過去、キャバレーへの出演やピンナップモデルなど表現者として活動していた時期もあり、デザインにはそういった経験とリンクするちょっぴりセクシーな要素も散りばめられています。

自らアイコンとなるユーモアたっぷりのイメージカット

インタビュー記事

2020年の秋、日本初となるインタビューに快く答えてくれたエミリー。デザインのルーツや前向きなエネルギーにあふれる彼女の価値観を、これまでに制作された壁紙のデザインとともにご紹介します。本書のために描かれた3つのオリジナルイラストもお見逃しなく!

どこか古い絵本のような優しい雰囲気

No.2


Y.S.D LONDON|ワイ・エス・ディー・ロンドン

ヘッドデザイナーのユカリ・スウィーニーと、彼女の娘であり仕事のパートナーでもあるキミカ・スウィーニー、そして愛犬テディ。2人と1匹のデザインスタジオ《Y.S.D LONDON》。
その特徴はなんといっても色。イギリスを象徴する曇り空のグレー。このグレーをベースにした色を使うことでそれぞれの色が相互に引き立ち、見る人のお気に入りの色以外は周囲に溶け込んでいくようデザインされているといいます。イギリスの街並みや田舎の風景、花や鳥、大好きな馬など日々目に映る一コマを描き起こしたデザインは、どこか古い絵本のページをめくるような懐かしさを感じさせてくれます。
日本で生まれ育ち、ファッション業界に就職。結婚を機にイギリスへ移り住んだ彼女の価値観は、環境保護やサステナブルといった視点に敏感なイギリスの土壌からも大きな影響を受けています。大量に作っては捨てるという消費のスタイルではなく、目指すのは自身の目や手の届く範囲でのもの作り。「古き良きもの」の価値を探り、何十年か経った未来、そういった価値を感じてもらえるもの作りをしたいという思いを胸に制作の過程にもこだわっています。

インタビュー記事

ヘッドデザイナーのユカリ・スウィーニーと、彼女の娘であり仕事のパートナーでもあるキミカ・スウィーニー、そして愛犬テディ。2人と1匹のデザインスタジオ《Y.S.D LONDON》。イギリスと日本、そしてアメリカをルーツとする彼女の言葉から、そのデザインや価値観に迫ります。

近代デザインの創始者

No.3


Morris & Co.|モリス商会

「部屋に何を置くにしても、まず考えるべきは壁であり、壁こそが本当の意味での家を作るのだ」 という名言を残したのは、近代デザインの創始者とうたわれるウィリアム・モリス。思想家、詩人、デザイナーとして19世紀のイギリスで傑出した才能を見せた。
イギリスの産業革命後の機械化による大量生産と職人軽視の時代のなか、装飾芸術の分野で手仕事の重要性を強調。「美しいと思わないものを家に置いてはならない」と語り、手仕事から生まれる自然に根ざした美しいデザインを発表し続けた。草花や樹木をモチーフとしたファブリックや壁紙は、現代でも色褪せることなく新鮮な魅力に満ちている。

Morris & Co.の世界

ウィリアム・モリスのタイムレスなデザインと「美しい暮らし」のための情報をお届けすることをコンセプトとしたサイトです。(※別サイトに飛びます)

イギリス王室御用達ブランド

No.4


Cole & Son|コール・アンド・サン

イギリスで140年以上の歴史をもつ王室御用達ブランド。その豊富なアーカイブは圧巻で、有名デザイナーの手彫りの木版を含め、貴重なブロックプリントやスクリーンプリントを数多く保有している。品質の確かさから、ウェストミンスター宮殿やバッキンガム宮殿、ホワイトハウス、ウィンザー城といった世界の名だたる建造物の壁紙としても採用されてきた。
伝統を誇る一方、トレンドをけん引する存在でもあり業界内でも常に注目を集めている。代表作〈Woods〉は1959年の発売以来、60年以上に渡り世界中から愛されている名作壁紙だ。

〈Chamber Angels/118/12027〉 ※WALPAにお問い合わせください

〈Woods/69/12147〉 ※WALPAにお問い合わせください

壁:〈Arance/114/24048
床:〈Arance/114/24046

Cole & Sonの世界

正規輸入代理店・テシードの公式サイトです。(※別サイトに飛びます)