インタビュー 「伝統技法で紡ぐ繊細な線と、デジタルで表現する大胆な色使い」 -Catherine Rowe-

ー どんなときにデザインのアイデアが浮かびますか?

常にインスピレーションを求めていますが、新しいアイデアが湧き上がってくるのはすごく唐突で、たとえば「目に入ったドレスの色」といった些細なことがアイデアにつながることもあるんです。そんなときは頭の中でイメージを膨らませ、忘れないうちに大まかにスケッチしておきます。鮮明な夢をよく見るので、眠っている最中にアイデアが浮かぶこともありますね。

ー デザインの制作にはどんなことが影響していますか?

ビクトリア時代と中世から多くの影響を受けています。あと昔からずっとウィリアム・モリスとアーツ・アンド・クラフツ運動の全てが大好き。アンティークなタペストリーや装飾された陶磁器からもたくさんのインスピレーションを得ていますね。

ー デザインにおいて一番好きな工程は何ですか?

デザイン制作の滑り出しの段階が一番ワクワクしますね。私の中にあるイメージの翻訳作業として、とにかくたくさんの下絵を描きます。その一つ一つの描写をアレンジしてパターンに仕上げ、デザインに生命が吹き込まれていくプロセスもたまりません!

ー 少しネガティブなことを聞きますが、新しいデザインの創作に行き詰まるときもあると思います。そんなときはどうしていますか?

行き詰まったら、一歩後戻りするようにしています。スタジオで過ごす時間が長くなり過ぎると罪悪感が生まれるので、創作活動がスランプに陥ったら散歩に行ったり、友達に会ったりするのが一番!リラックスすることでより柔軟にアイデアが湧いてくるようになります。

ー デザイン制作のどんな過程に時間をかけていますか?

全てのデザイン制作にすごく時間がかかります。デザインの大枠を描く際はとても自然にアイデアが湧き、修正や変更はほとんど必要ありません。制作時間のほとんどを色彩の決定に費やしているといってもいいくらい。最終的にどんな色にするか気持ちを固めるのはとても難しいですね。

ー 色の組み合わせを考えるときに何を重視していますか?

いろいろ試してみるのも大事ですが、私の場合はもっと直感的なものを大切にしています。トレンドの影響を考えることもありますが、結局は単純に好き!と思える配色にしています。
最終的には、色同士がケンカしないようにすることでしょうか。細やかなデザインの背後にある色のインパクトも重要なので、慎重な気配りと試行錯誤が必要です。

ー モチーフが際立つ配色は、直感と時間をかけた試行錯誤を経て完成したものなのですね。では、流行に捕らわれない好きな色の組み合わせは、どんなものになりますか?

インテリア、特に壁紙の場合は、例えばメインにホワイト、ピンク、グリーンが使われるような色数が限定されたデザインが人気ですが、私はもっと大胆でカラフルなパターンを使わずにはいられないんです。勇気あるお客さまがそんな壁紙を使ってくれているのを見るとすごく幸せ!!インテリアの世界で赤はあまり好まれない傾向にあるのですが、好都合なことに私自身もあまりひかれない色なのでほとんど使いません。

ー その色の組み合わせのセンスはどこで培ったのでしょうか?

デザインにはデジタルで色を付けるので色を合わせるのは比較的簡単に行えますが、経験の積み重ねが上達につながったと思います。過去の失敗が何よりの教えです!

ー 子供の頃印象的だったことや夢中になったことはありますか?

ラッキーなことに家族もアートが好きだったので、たくさんのアーティスティックな影響を受けながら育ちました。姉も熟練のイラストレーターです。

ー 趣味は何ですか?

ローラースケート、ダンス、読書、愛犬と郊外を長い時間散歩すること。ローラースケートはリラックスできるし、すごくストレス発散になるんです。

ー 自宅には壁紙を貼っていますか?

婚約者と賃貸に住んでいるので残念ながら壁紙は貼れないのですが、シールタイプの壁紙を使っています。今スタジオには『WALPA』が制作している私のデザイン《Hatte me!》の〈Lemon〉を貼っています。

ー イギリスで壁紙はどんな立ち位置のものになりますか?日常的なものでしょうか?

イギリスでは間違いなく壁紙の人気が再燃し始めています。しばらく低迷していた時期もあるのですが、見事に返り咲きました!

ー イギリスでのコロナ禍によるロックダウンは大変なものだったと思います。ステイホームで人生観は変わりましたか?

ロックダウン中は、たくさんのサポートや注文をいただいて乗り切ることができました。仕事のおかげで正気を保つことができましたね。仕事がどれだけ大切かということ、完全に私の一部になっていることに気付きました。

ー 今後したいこと、夢などありますか?

気持ち良く仕事を楽しみながら、自分が心から大好きだと思えるデザインやアイテムを作り続けていきたいです!

ー 最後に、世界へ届けたいデザインについて教えてください。

使ってくれる人の日常を、高級感や美しさで包み込むようなデザインを届けたいですね。あと、遊び心を忘れず、人生を深刻に考えすぎないで、というメッセージもね。

Special Thanks to

Catherine Rowe

キャサリン・ロウ

ケンブリッジ・スクール・オブ・アートでイラストレーションを学び、2010年にテキスタイルデザインの道に。2018年にイギリスの老舗ファブリックメーカー《Liberty Fabrics》が開催したコンペティション『#Liberty Open Call』で5,000人を超える参加者の中から受賞者の1人に選ばれる。
自然や野生動物にインスパイアされたキャサリンのデザインは、伝統と現代的なスタイルのマリアージュ。スクラッチボードの技法を使ってデザインの構図を描き、デジタルで色を追加している。大胆な色使いと繊細な美しい線で描かれたモチーフが魅力。